名古屋大学祭講演会
「小説には向かない職業」
2000.6.11(日)

■レポート■

★2000年6月、名大祭にて行なわれた森博嗣先生の講演会の模様をなるべく時系列に沿って記述しています。途中、個人的な感想や想像が混ざっているかもしれませんが、予めご了承願います。なお、森先生もおっしゃっているように講演内容を記述し公開することは、著作権の侵害のおそれがあります。それを覚悟でここに公開するするものであるということを認識してお読みください(と言っても、読む分にはなんら問題はないと思います)。


【上】
 朝方まで降っていた雨も目が覚める頃には上がっていました(つまり、こんな大切な時に朝まで起きていたのか>はい、オフのレポートを書いていたのです)。講演会の始まる2時間前(受付開始1時間前)、目を覚まし、するべきことを確認。爪は切ってある、ヒゲと髪は剃った、ご飯を食べる時間はないし、第一食料のストックがない(苦笑)。あとは歯を磨いてシャワーを浴びるのみ(想像しなくてもよい)、ではなくて服もちゃんと着ました。とにかく身だしなみは整えて、講演会に臨む姿勢です。そうそう予約はがきを忘れてはいけません。家からN大学までは自転車で5分、我ながら良いところに住んでいますね(地理的に)。

 去年と同じ講演会場に着いたのが12時15分くらいでしたが、もうすでに予約席の受付に行列(50mくらい)ができています。最後尾に向かう途中、昨日のオフでお会いした会員の方とご挨拶。10分ほどで受付にてチェックされ会場入り。1年ぶりに入った大講義室、昨年の講演会の様子が目の前に再現されているかのような錯覚(あ、森先生・・)。入ったころには半分くらいの席が埋まっていました。今年は予約席に森ぱふぇ枠と一般枠の区別はなく、当日席のスペースだけが区別されています。しかし、そこはもう満席でした。当日席狙いのぱふぇら〜の方が無事座れたのか気にしつつ、演壇近くの席を探して前へ進みます。すると、左前の方で杜馬さんの声が。行ってみると席がまだ空いているようなので、座らせてもらいました。前から4列目の席(わーい)。近くにはオフ会でもお会いした方々(けいさんにTOMTOMんにりとさんにかつさんに・・)がずらり(ここで後ろの席におられた櫂えずみさんと名刺交換)。と思っていたら、前の席を占領されているのは森ぱふぇスタッフの方々たちではありませんか。いつもご苦労様です〜。開演時間までしばらくお話したり、名大祭の実行委員会から配られたアンケートに記入したりして時間潰し。
 そしていよいよ! をかへまさんの登場です(笑)。この日も素敵な出で立ちで、全体的にパンクな印象です。パイプ椅子に座りながら司会の出番を待っておられます。やがて時間になり、をかへまさんが壇上へ。そして後方から森先生ご登場!! お洋服はカールヘルムのようです。先程までをかへまさんが座られていた椅子に一旦座られて出番をお待ちになる森先生。そこで話題になったのがシャツの柄がウサギネズミかということでした。みんな良く見えなくて結局判明しないまま、森先生はをかへまさんに紹介されました。その時、森先生は今にもデジカメで会場を撮ろうと構えられたところだったので、照れ笑いをされて、慌て気味に登壇されました(笑顔が素敵です)。

 まず、壇上に上がられた森先生は「ここに『ダ・ヴィンチ』があります」とおっしゃって、ページをめくられ、ご自身のプロフィールを読み上げられました、その内容に軽いつっこみを入れられながら。例えば、「『すべてがFになる』(講談社文庫)でメフィスト賞を受賞して・・」というくだりでは、「講談社文庫ではメフィスト賞を取ってないですよね」とか、さらに、「犀川・萌絵シリーズはミステリィマニア以外に支持を受け一気に人気作家となる」と書かれていることに対して、「ということはまだミステリィマニアの人たちには支持されてないということですね(笑)」というつっこみを入れられたり。会場は最初から笑いが絶えません。自己紹介からして、やっぱり森先生です。このあとさらに楽しい話が続くので、自分の顔はきっとずっと笑顔だったことでしょう(笑)。

 初めはOHPを使って恒例となっている今回の講演会のキーワードの紹介。今回はすべて「ion」で終わっているものです。

・問題(question)
・方程式(equation)
・シミュレーション(simulation)
・真似(imitation)
・予測(calculation)
・評価(evaluation)


以上のようなものだったと思います。断っておきますが、目が悪いため記憶違いをしているかもしれません(苦笑)。
このOHPはすぐ引っ込められて、次も恒例インターネット検索のヒット数の比較。正確な数字まで覚えていませんがだいたいのところ、コンクリートが7万ヒットくらいで以下セメント、モルタル、高流動コンクリートと続き、森先生のご専門のフレッシュコンクリートになると170ヒットくらいで、「いかにマイナか分りますね(笑)」とのこと。その隣には作家のヒットランキングもあって、1位は司馬遼太郎、2位が夏目漱石、3位が京極夏彦氏で、「来年あたり京極さんが2位になりそうですね」とおっしゃる森先生も、きっと来年には3位くらいになりそうな予感です。ここで、森先生がおっしゃったことは、もちろん昔の人が生きていた頃はインターネットなんてなかったから、こういう結果になっていくのは仕方のないことですが、これもひとつの評価(エバリュエーション)だということです、という内容だったと思います。早速キーワードの登場ですね。

 次に「すべてがFになる」の映画化についての話をされ、俳優アンケートの集計で現在1位の俳優も2位の俳優も森先生はご存じないそうです。それから劇場公開だということにも言及されていましたが、あくまでもそういう話があるだけですよと念を押されていました。う〜ん、観たいような観たくないような複雑な気持ちです。

 引き続いて作品のご紹介。S&Mシリーズを紹介されながら、会場に向かって「HPをご覧になっている方手を挙げてみてください」とおっしゃり、ほとんどの人が手を挙げるのを見られて「だったらこれを見せても意味ないですね(笑)」とお笑いになる森先生。お茶目です〜(微笑)。それから次の文庫は「まどろみ消去」で、自作品中一番お好きだということも。さらに気になる「解説者は・・どこかがまたクイズをするでしょうから言わないでおきます」と気を遣われる森先生(はい、うちらですね、森ぱふぇ!)。

 そしてVシリーズの紹介では、次回作「魔剣天翔」がシリーズ中もっとも長いということでした。その後に出る予定の短編集「今夜はパラシュート博物館へ」に収録される予定の短編の内訳など。そんな中、この日の2日前に思い付かれた、先生の日記にも書かれているすっごく面白い話(なんとタイトルは「賊(ゾク)」だそう<字が合ってるかわからないですがいわゆるギャングもの)についても少し触れられました。もちろん内容はおっしゃられません。ここで話したら書けなくなりますからとのこと。森先生があそこまで面白いとおっしゃるぐらいですから、いやがおうでも期待に胸膨らみます(早く活字になってほしいですね〜)。そしてVシリーズはまだまだ続いて15作品ぐらいにするつもりだということでした。ああ、そんなにこれからも森先生の小説が読めるのかあ・・と嬉しく思うぱふぇら〜多数だったことでしょう。21世紀も幸せですね。

 それから、近況報告の書籍化は少し遅れ気味で、「毎日は笑わない工学博士たち」も予定どおりには出ないだろうし、次の「封印サイトは詩的私的手記」(森先生は「本屋さんに注文するのに恥ずかしいタイトルですが」と苦笑されながら)も今年中は無理そうだということでした(ここで森先生は「今月中」とおっしゃいましたが、おそらくは「今年中」の間違いだと思います。ああ、これが森先生がよくすばるさんに指摘される間違いのパターンなんだなあとほくそ笑むのでした(ほくそ笑み)<耳ざといな)。

 で、次はシリーズ外の単行本についてです。「女王の百年密室」は100年後の世界の話で、人間と外見がまったく一緒のロボットが出てくること、その名前(own nameがね)ロイディということが判明! そしてクイズにもなっているこのロボットの一般名詞については3日間は考えられたそうです。非常によく考えましたとおっしゃっていました。SFは、惑星とか宇宙船とかロボットとかそういったものひとつでも、名前にこだわらないと、全然世界が構築されなくてつまらなくなるとのこと。ふむふむ、なるほど〜と思いました。SFファンの方やその筋の方にメールで意見を聞かれたりしたそうです。しかし、森先生が3日も考えられた名前を考えるのは指南の技ではなくて至難の業であります。その名前がホントに100年後、一般名詞として使われていたとしても確かめられないのが残念です・・(遺言でも残しておくか・・笑)。
 次が短編集「工学部水柿助教授の日常」の紹介で、これには水柿助教授が工学部をやめて小説家になるという(笑)第2部も予定されているそうで、さらにその後山にこもって・・・という第3部もあるとか(これはジョークでした)。このシリーズはまだ読んだことがなくて、特に単行本化を待っているシリーズのひとつです。
 その次が写真集「アイソパラメトリック」のご紹介。これは、森先生ご自身の写真集ではなく(笑)、森先生が撮られた、と言っては紛らわしいので、お撮りになられた写真集だということです。「もうほとんど同人誌に近いですね」と苦笑される森先生。さらに売れるかどうかわからないので、この写真集にはピンバッヂを付けるとか付けないとか・・是非つけてくださ〜い、お願いします。
 それから小説すばるに連載されている「落ちていく僕たち」も単行本として出版されるそうですが、タイトルはこのままでは弱いので変更されるでしょうとのことでした。そのタイトルの話から、この本のタイトルではないですがと断られつつ、森先生のジョークが炸裂! 「今年もっともベストセラーになる可能性のあるタイトルというのが、合体ロボットもののSFで怪獣か何かと戦う時に合体するのですが、脚の部分だけが上手く合体できなくて云々という・・『合体不満足』」(会場爆笑) 鈍い私はすぐに気付かなかったのですが、まもなく意味が分かって大笑いでした。こういう突如として挿入されるジョークもさすが森先生、絶妙です。
 最後に「スカイ・クロラ」というファンタジィものか戦記ものも書かれる予定があるというお話も。

以下【中】に続く・・・


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